双眼鏡

  双眼鏡が好きある。他の多くの人のように天文関係に興味があるとか、鳥を見るのが好きであるとか、そういうことは全くなくて、私の場合は、あえて言えば、 遠 くの風景を見るのが好きなのである。特に高いところから遠くを見ると、肉眼では分からない多くのものが見えて楽しくなる。都庁の展望台から、双眼鏡で下界 を見たら、以前住んでいた家が見えたのにはとても感動した。双眼鏡とは、通常では私には見えない世界がのぞける魔法の道具である。

ミノルタ 10×25
  初めて自分で買った双眼鏡。我が家にはそれまで、メーカー不詳のニコンのミクロン型のものしかなかった。それも中古で買ったか、もらい物だったかはっきり しない。このミノルタの双眼鏡を買った場所は御徒町駅横の写真屋。ちなみにこの写真屋は現在、薬局になってしまった。メーカー製であるということと定価の 6割引という文字に惹かれて購入した。7〜8年して、アメリカのREIのカタログに全く同じものがかなり安い値段で載っていたのも今となっては懐かしい。 見えは、ツァイスなどの同じ10×25と比較するとベールが1枚かかっているようでコントラストも低く、解像力もない。また実視界が狭く、眼鏡のまま使用 するのは厳しい。この双眼鏡は多分、鎌倉光機のOEMだ。

ペンタックス 12×50
   明治学院大学の前に松坂屋という中古カメラ屋があった。その中に金融新品などを扱う高輪カメラというセクションがあり、この双眼鏡が格安で出ていた。10 倍と12倍のものがあったが、当時は、倍率は高ければ高いほど良いと思っていた。というわけで12倍を購入したが、実際に使ってみると12倍は視界がぶれ て、とても見づらい。また大きいだけでなく、鏡胴が持ちづらい。ぶれなく視界を確保するには三脚が必要であるが、 そうするとどこでも持ち出せる双眼鏡と しの 意味はない。見えは、これといった特徴もない平凡なものだが、しばらく住んでいた団地の14階から外の眺望を見るのに活躍した。
 
ツァイス
   もう何年前になったのだろうか。たぶん二十年ほど前だろうか。ある時、突然、双眼鏡が欲しくなり、急遽カタログを集め始めた。ただ、当時、光学製品はニコ ンしか眼中になかった。当然カメラもニコンしか使っていなかった。ニコンのカタログで色々検討した結果、ひとつだけ、ずば抜けて高いダハプリズムの製品が あった。他のものとスペックを検討しても違いが良く分からない。業務用と民生用の違いなのか、それともずば抜けて見えが良いのか。実物がとても気になっ た。ちょうどその頃、上野にヨドバシカメラが開店したので、ショーケースの中を見るとニコンの高級品が鎮座していた。何回かショーケースをのぞき、ある 時、思い切って店員に声をかけた。店員は心安くそのダハプリズムの高級品を出してくれた。そして、精神を集中させ、手に取り、外の表通りを見てみた。安い ものに比較し、格段に見えるわけではない。こんなわけないと店の中から外まで、いろいろな場所を見たがやはり格段に見えるという感じはなかった。店員はそ の間、ずっと付き合ってくれた。品物をショーケースに戻しながら、「どうでしたか」と声をかけてくれたので、格別な見え方ではないと感想を言ったら「そう でしょう。そうでしょう。」と言いながら、ではこれはどうでしょうか。と別のやつを出してくれた。それがツァイスだった。ゴムに包まれた無骨な双眼鏡だっ た。すぐに、ツァイスだと分かったのはアメリカのメールオーダーカタログで見ていたからだった。あまり期待することなく、ニコンと同じように表通りを見 た。その瞬間、あぁという声が自分の口から漏れた。表通りは夕暮れ時だったが、肉眼で見るより明るいのである。また、通りを隔てた看板が浮き出て見える。 また、その看板がすぐ前にあるかのごとく、手に取れるかのごとく見える。それまでの双眼鏡とは全く別のものかのように対象物が実物より明るく浮いて見え る。あらゆるものが他の双眼鏡とは隔絶したかのような見え方だった。まるで別次元の双眼鏡だった。店員は自身ありげに「いいでしょう。」笑みを浮かべ言っ た。値段を聞いたら、何と値段は二十万円を超える金額だった。最高級品のニコンの三倍。欲しかったけど、とても買える金額ではなかった。ショーケースに戻 してもらい、あとは夢遊病者の如く店を後にした。それから双眼鏡ではツァイスという名前がトラウマになり、いつかは手に入れようと思った。

 
カールツァイス 8×30 B/GA T*P*  ClassiC
 150周年モデル これは小型で形も良く気に入っている一品。見え味はクラシックシリーズに共通するものでコントラストが高く、中心部がシャープなところである。逆光には弱 いが、順光ならさすがツァイスという見え味。私はニコンEIIよりは見え味は上だと思う。また小型なので持ち歩きにも苦にならない。だが、残念ながら私の 通勤カバンには入らない。

カールツァイス 8×30 B/GA  Classi Olive
 中野の某中古屋で新品が放出されていた。何でも、販売を担当していた某社が取り扱いを中止したので、市場に放出 されたとのこ と。見え味は他のツァイスと同じで、明るく、真ん中の解像度が高く、シャープである。IF方式がやや面倒であるが、慣れてくるとどうって事はない。スト ラップはビニールの安っぽいものだが、キャップが接眼側と対物側についている。ケースは付属していないが、ライカの皮ケースがちょうど良い大きさなので、 使っている。ケースもライツ時代のレトロなものなのでよく似合う。

カールツァイス 10×40 B/GA T* P*  ClassiC
   この双眼鏡、二十年ほど前、海外のメールオーダーカタログでよく見かけたが、製造中止になって久しい。ところが、詳しい状況は分からないが、数年前に復刻 生 産されたらしい。海外の写真店のウェブを見ていたら、新品が特価品として出ていた。躊躇せず注文してしまった。自宅で国際小包の封をほどき、丁寧に取り出 した。夜だったが、ベランダに出て、いろいろなところを見てみる。暗いので見え味は良く分からない。翌日から外に持ち出し、昼間の様々な景色を見てみた が、残念ながら、驚くような感動は無かった。ちょっとガッカリであった。あの上野のヨドバシカメラの感動はどこへいってしまったのだろう。ツァイスも合理 化の名のもとに手抜きを覚えたのだろうか。写真のレンズなどではよくあることである。新型になり、カタログデータはあがっているものの、実写がさえない。 最新のレンズより、五十年も前のもののほうが写りが良い。よくあることである。 ところが、ある日荒川の土手に持ち出し、河原で自転車に乗っている人にピントを合わせたら、何と人物が浮き出て見える。上野のヨドバシカメラの感動が甦っ た。どうも距離や光の条件によるらしい。でもすごい。さすが、ツァイス。

カー ルツァイス ビクトリー 10×40BT
   ビクトリーの評判があまり宜しくないのは聞いていた。でも比較してみないと何ともいえないと思い、ヤフーオークションで手に入れた。眼鏡使用者にはツイス ト型の見口はやはり便利。防水という点も安心できる。上記クラシックと比較すると若干だが、見えは落ちる気がする。また、眼鏡を使用しているため、僅かだ か接眼 レンズ側より光が入るため、視界にハレが出る場合がある。ケースは上記のクラシックシリーズと型番は違うが殆ど同じで、私には区別がつかない。袋型のソフ トケースで平凡なもの。もっとツァイスはケースやストラップに力を入れて欲しいものだ。現在は製造中止となり、FLシリーズに置き換えられた。

 カールツァイス ビクトリー 10×42 FL 
  うーん、明るい。あまりにも明るすぎて、目が眩むようだ。さすがに、ツァイスが満を持して投入しただけのことはある。明るさだけでなくシャープかつ解像度 もすばらしい。すばらしい見え味だ。これで私の心の迷いも埋まるであろう。難を言えば大きすぎるのが欠点か。 

  カールツァイス ClassiC Compact 10× 25 BT
   いつも双眼鏡を持ち歩きたいと思い、通勤用のカバンに入れておく双眼鏡が欲しくなった。 ツァイスフリークなので、ビクトリーにしようかクラシックにするか悩んだが、コンパクトさでこちらにした。ケースは別売で皮製のものがあるが、結構な値段 なので、ナイロンケースで我慢している。

  ライカ トリノビッド 8×20
ライカの双眼鏡はツァイスほどではなかったが、気になる存在であった。 なぜならカメラはライカを愛用しているからである。ライツのレンズは素晴らしい。なら、双眼鏡も素晴らしいはずであるという思い込みからだ。安い出物が あったので注文した。届いたのは何とライカカメラジャパンの正規品だ。安かったので並行品かと思いきやびっくりだ。つくりが良い。もちろん、見えはさすが ライカ。

コ ン 8×30EII
   バードウォッチングに定評ある一台。広い視界は見ていて気分が良い。これは国産品だが、日本ではなくアメリカで購入した。アメリカでは約300ドル。おま けとしてニコン銘の安い時計がついてきた。この双眼鏡はつくりがとてもよい。この辺はさすがにニコン。見え味は、さすがに安物の双眼鏡とは一味、違う。細 かく見なければ、高級品と比較しても遜色ない。コストパーフォーマンスはとても高い。嵩張る大きさを我慢できれば常時携行して、使いたい一台だ。万人にお 勧めできる一台。

キ ヤノン  7×15FC
コンパクトタイプかつフラットなこのモデルは前から興味があった。見え味はそこそこ。悪くない。銀座のレモン社で安く出ていたの で衝動買いし てしまった。ホントは5倍のが欲しかったが、まぁいいや。視度補正が出来ないので、双眼鏡がよく分からない他人に貸し出す時は却って好都合。


キ ヤノン  8×25IS
  本当は10倍以上のモデルが欲しかったが、インターネットオークションで出ていたので、かなり安い値付けをしておいた。忘れたころ、落札の知らせが来た。 それも下の15倍と一緒に。8倍の双眼鏡に防振が必要かどうかは別として、防振はそれなりの効果がある。 8倍にしては大振りな、この双眼鏡の防振スイッチを入れると、景色がゆっくり止まりだす。縦だけの防振だが、それなりの効果はある。欠点は大振りなこと と、電池がCR123だということ。

キ ヤノン 15×50IS
   上記の8倍と一緒にオークションで落札した。こちらだけでよかったのだが、同時に落札するとは、世の中の上手くいかないところ。電池は単三が二本。防振は さすがに良い。15倍にもかかわらず手持ちで景色が止まって見える。月のクレーターが良く見える。 解像力は良くなくても、結果的に細かいものが良く見える。また色収差も多く感じるが、防振効果は全てを隠してくれるようだ。

コーワ  BD 8×30
コーワというのは風邪薬のコルゲンコーワで有名だが、光学会社としても 有名な会社である。その昔はカメラも作っていた。コーワの中古カメラは現在でもその レンズ性能の高さから市場では高値で取引されている。カメラの製造をやめたあともスポッティングスコープや観光地にある有料の双眼鏡などを作っている。特 にスポッティングスコープはライフルなどの標的を見るために作られたものが転じて鳥見用のスコープとして使われている。新宿のあるお店で緑色の外装の双眼 鏡おいてあり、コーワの双眼鏡だとは思わず、のぞいてみた。よく見えるのに驚いた。さすが スワロフスキーと感心したものだ。ところが良く見るとスワロフスキーではなかった。間抜けな話だ。それがコーワとの出会いだった。 この双眼鏡は巷の評判が高い。価格の割にすっきりとした見え 味で、色づけも標準。コントラストも高い。通販で早速購入した。
コーワ BD 8×25
   BD8×30と一緒に購入した。これは形が良いので、前から気になっていたもの。 BD8×30の見え味が良いので期待していた。実際に屋外で使用してみるとコントラストもあり、人物が浮き出て見える。これ単体で使えば充分に満足でき る。ただ、運悪くこの時はライカトリノビッド8×20も持っていたので、比較してみた。比較するとライカに比べ若干白っぽくなる見え味だった。明らかに抜 けが悪い。値段の差を考えれば仕方ないか。

ブッシュネル H2O 8x42
   アメリカのバーゲンセールで何と75ドル。おまけにウェンガーのアーミーナイフまでおまけとしてついてきた。プリズムはBaK4で完全防水。はじめに夜の 街灯を見てみた。 ゴーストとハレーションが盛大にでる。フェーズコートではないようだ。昼間、持ち出して、じっくり観察したが1枚ベールがかっている見え味だ。でも、値段 を考えたならば、外装も含め、立派なものだ。  

鎌倉光機 8×42
   オークションで新品を手に入れた。安かった。送料込み5400円。外箱にもケースや本体にも鎌倉の文字は無いが、取り説のみ鎌倉の文字がある。主な外装部 品はプラスチック製であり、つくりはやや雑。同じポロタイプのニコンEIIなどと比較するとかなり差がある。見え味は悪くはないが、取り立てて素晴らしい というほどでもない。明らかに解像力不足である。長く見ていると大きさの故か、疲れる。視界が広いのは便利。
 

鎌倉光機 10×25
 オートフォーカス これもオークションにおいて新品で手に入ったもの。オートフォーカスの速さは初期のオートフォーカス一眼レフと同じくらい。遅いという感じは無い。問題は 大きくて、重いのと見え味がよくないことだ。視界が狭い、コントラストが無い、解像力が無いの三拍子揃っている。後述のコニカと良い勝負。

鎌 倉光機 4×20
 パンフォーカスで視度補正もない。でも見え味は悪くない。ピントリングに見えるものが赤いライトのスイッチになっている。劇場で使うことを想 定しているのだろう。
 

コニカ 8×21
   ディスカウントショップで980円だった。外箱には定価19800円と書いてある。金融品だとか、メーカーの在庫処分で投売りだとか、安い理由は色々ある が、中身を見るとこの定価はいい加減なものだとしか思えない。980円のメーカー品が、どの程度のものか興味があったので購入した。見え味はやはり値段相 応。昼間なら、視界が狭いものの我慢して使うが、それ以外ではとても使えない。
 

Vixen ビクセン コンサート 3×28
   いわゆるオペラグラス。安かったので二台買ってしまった。使い道は、今後考えよう。 装飾品としてよいかもしれない。

  カールツァイス 3X12B ClassiC
   松島眼鏡店でこの単眼鏡を双眼鏡の見口に挿入させて、望遠鏡として使う方法を教えられた。 アダプターを使用し、固定する。とっさの場合には便利そうだ。単体としても、大した見え味である。ルーペに使えるのも便利。ただ、値段もビックリ価格であ る。
 
カールスバーグのおまけ
   これはビールをワンケース買ったらおまけとしてついてきたもの。 形はそれなりだが、色収差がひどくて、盛大に虹が発生する。おまけとはいえ、ここまでひどい双眼鏡は初めてだ。

ケースとストラップ
   私の持っている双眼鏡のケースは、ナイロンかビニールレザーだが、ツァイスのものはコンパクトタイプをのぞき、すべて皮のソフトケースだ。 形は四角で単なるジッパーつきの袋型である。正直、使いづらいケースである。双眼鏡は一流品でも、このあたりはいただけない。コンパクトタイプしか保有し ていないが、ライカも皮製のソフトケースである。これはストラップともども使いやすい。さすがにカメラ用の速射ケースを作り出したメーカーである。ライツ 時代の皮のケースのみを手に入れたが、ショルダーストラップも含め、皮の質も良い。皮ではないが、キヤノンやニコンもケースは悪くない。さすがカメラメー カーである。抜群というほどではないが、それなりに使いやすい。ストラップはオリジナルを使用しているのはコンパクトタイプだけで、あとはすべてカメラ用 のストラップを使用している。昔の軍隊が使っていたような皮の丈夫なケースが欲しい。