復刻版のニコンSPとS3

高校に入ったお祝いにニコマートFTNを買ってもらった。初めての本格的なカメラであり、一眼レフだった。
TTLで開放測光。シャッターダイアルが鏡胴にあるのがご愛嬌だが、私にとって、それは素晴らしいカメラだった。昭和43年当時、TTL開放測光はトプコ ンとニコンだけだったような気がする。ベストセラーのペンタックスSPは絞り込み測光、キヤノンとミノルタは思い 出せない。ミランダやペトリも全く記憶にない。ただ、ニコンもFはフォトミックファインダーを使う物で、建て増しの二階屋のように不格好だと思うのは私だ けだろうか。ニコンはF2で も同じような方式だった。
でも、現在は当たり前なような開放測光だが、当時は露出計内蔵のカメラを使っていたのはアマチュアだけで、プロはほとんど使っていなかったように記憶して いる。だから開放測光も絞り込み測光もプロには関係なかったのだろう。
特に報道写真の分野ではニコンFが全盛で、たまにサブカメラとして、ニコンSPやニコンS3を使っている人がいたのを覚えている。

ニコマートFTNの次に買ったカメラはニコンFである。標準レンズの次に、135mmを買ったのだが、レンズ交換が結構、大変だった。特に、埃の多い埋め 立て地 でレンズ交換を行ったりするのは嫌だった。そこでボディを増やした。選択肢は無かった。私のニコマートFTNは半年くらいで、シャッターダイアルが緩み、 軍艦部が歪んできた。ボディが弱かったのである。
そこでニコンFを選択したのだ。このカメラ、約四十年たった今でも、擦れや傷はあるが、問題はない。丈夫なカメラだ。ただ、当時は入手難で、値引きは全く なく、入手まで三ヶ月かかった。定価に1割上乗せすれば、翌日に手にはいるというプレミアムのおまけまであったが、三ヶ月我慢することにした。

さて、次に広角レンズだが、ここで、広角レンズの使いやすい、距離計連動カメラが欲しかった。広角レンズは距離計連動カメラだ。現在もこの考えは変わらな い。
キヤノンは距離計連動カメラとして、現役の7sがあった。その他のメーカーでレンズ交換式距離計連動カメラを作っていたのはライツだけだった。ライツは M4だったが、初任給十ヶ月分ほど必要だったと記憶している。夢のまた夢である。
中古は食指が動かなかった。キヤノン7sの形が気に入らなかったのと、キヤノンデミのシャッターボタンの重さのイメージがあったのでキヤノンは却下。
その頃、ニコンSPの再生産の噂が根強くあった。ニコンF2が登場する少し前の頃であった。いつか手に入れることを夢見、二十一世紀まで待ってしまった。
そして、その復刻は噂が出てから、約四十五年経過し、実現した。

さて、復刻版のニコンSPであるが、レンズは35mmのf1.8がついている。
同じ復刻版のニコンS3には50mmのf1.4がついている。
この標準レンズが欲しい。そんなわけで標準レンズを手に入れたら、レンズリアキャップとしてS3がついてきた。